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●勇気と堅実 18世紀の競馬の格言にこのようなものがある。「Snap for speed, and Matchem for truth and daylight.(スピードのスナップ、勇気と堅実のマッチェム)」スナップは1767年~1769年、1771年と3回イギリスのリーディングサイアーに輝いた優秀な種牡馬である。ダーレイアラビアンを祖先とするが、エクリプスとは別の系統のため、現在その血統は残っていない。スナップの産駒はその豊富なスピードが人気だったため、「スピードのスナップ」といわれた。そしてマッチェムは1772年~1774年の3回リーディングサイアーになったが、種牡馬としては超一流とまではいかなくても、優秀と呼べるものであった。彼の産駒は競走馬として不可欠な勇敢さと、気まぐれに走らない真面目さ、堅実さがあったため、「勇気と堅実のマッチェム」といわれた。 エクリプス・ヘロドと三大始祖と並び称されるマッチェムだが、競争成績、種牡馬成績は共に大きく水をあけられているが、それにもかかわらず現代まで絶滅することなく子孫を繁栄させていることは驚愕に値することだ。派手さは無いが、まさに「堅実」な、よい種牡馬の手本である。 ●垣間見せた強さ 彼の競争生活に関する記録は少ない。最も有名な記録は、7歳時、1775年に行った当時の強豪馬トラヤヌス(Trajan)とのマッチレースであろう。このレースでマッチェムは4マイルを7分20秒という、当時では破格の時計で勝っている。トラヤヌス陣営は、体調が万全でなかったと言い、翌年再戦を申し込んだ。ここでもマッチェムは勝利し、最初の勝利がフロックではないことを証明した。その後は、体調不良などで満足にレースに使えず、それでも12戦10勝という好成績で現役を退く。フライングチルダーズ(Flying Childer's)やエクリプス(Eclipse)などの超一流とは比較にならないが、それでも十分一流と呼べる成績であった。 ●異国の地で栄華を誇る 種牡馬生活に入ったマッチェムは、前述の通り3度リーディングサイアーに輝く。その中で最も優秀だったのがコンダクター(Condutor:1767年)であろう。コンダクターの母は、先ほどの格言に出てきたスナップの産駒であり、そのためコンダクターは格言から生まれた名馬といわれる。コンダクターから続くサイアーラインは今も存続しており、1850年にはイギリスで最初の三冠馬となるウエストオーストラリアン(West Australian)が生まれ、現代まで続くマッチェム系の重要な中継となった。彼の産駒はアメリカにも輸出され、アメリカでマッチェム系の繁栄が始まる。1917年、第1次世界大戦中に生まれたマンノウォー(Man o'War)は、後にアメリカ史上最強の競走馬と呼ばれるのであった。「戦艦」という意味からとったマンノウォーは、数々のレースでブッチギリの圧勝を続け、100馬身差圧勝の伝説を含む、21戦20勝という驚異的な成績を残す。その大きくて真っ赤な体から、ビッグレッド(Big Red)という愛称で親しまれた。アメリカの有名競馬雑誌「ブラッドホース」の主催する「20世紀のアメリカ名馬100選」では、堂々の第1位である。マンノウォーは日本でいうオグリキャップのようなアイドルホースで、アメリカの競馬ファンであれば誰もが名を知っているような馬である。マンノウォーから生まれた産駒も優秀で、中でもウォーアドミラル(War Admiral:1934年)はアメリカ三冠を制覇し、映画の公開で日本でも一躍有名になったシービスケット(Seabiscuit:1933年)の最強のライバルとして知られる。ちなみに、シービスケットの父はハードタック(Hard Tack)という馬で、マンノウォーの息子である。当時のアイドルホースが2頭とも偉大なるマンノウォーの血を受け継いでいることは、アメリカでのマッチェム系の繁栄を象徴しているだろう。 現在アメリカでのマッチェム系の勢力は、約6%となっており、日本の約1%を超える割合となっている。世界的にも減少傾向にある中、アメリカでのマッチェム系人気はやはり昔のアイドルホースのおかげであろう。最近でも、BCクラシックを史上初めて連覇したティズナウ(Tiznow:1997年)が出ており、日本でもカルストンライトオとサニングデールという2頭のスプリントGI馬を輩出し、存在をアピールした。 マッチェムは1781年2月21日、33歳という高齢でこの世を去った。現役時代に垣間見せた強さは、約150年後のアメリカで覚醒することとなった。マッチェムの血はアメリカ競馬を語る上で欠かせない貴重な血統である。 |
マッチェム Matchem(UK)
牡 鹿毛
馬主 | William Fenwick(ウィリアム・フェンウィック) |
生産者 | John Holmes(ジョン・ホームズ) |
調教師 | 不明 |
戦績 | 12戦10勝 |
獲得賞金 | 不明 |
主な勝ち鞍 | トラヤヌスとのマッチレース レディーズプレート |
血統表 | |||
Cade 1734 |
Godolphin Arabian 1724 |
? | ? |
? | |||
? | ? | ||
? | |||
Roxana 1718 |
Bald Galloway | st. Victors Barb | |
Grey Whynot | |||
Sister to Chaunter | Akaster Turk | ||
Cream Cheeks | |||
Partner mare 1733 |
Crofts Partner 1718 |
Jigg | Byerley Turk |
Spanker mare | |||
Sister to Mixbury | Curwen Bay Barb | ||
Curwen Spot mare | |||
Brown Farewell 1710 |
Makeless | Oglethorpe Arabian | |
? | |||
Brimmer mare | Brimmer | ||
Trumpet's dam |